野菜や魚の旬を意識するようになったのは西荻窪で買い物するようになってからだ。
もともとぼんやりしていて一般常識がないし(アナログ時計の読み方を知ったのは高校生の時だった)、自分で材料を揃えて料理を作ったのは就職を機に実家を出て大学時代の先輩の運営するシェアハウスに住んでからのことだった。そのシェアハウスの家主が料理上手で、基本的な調味料の使い方(みりんという物体を初めて認識した)や、フライパンと包丁とまな板以外の調理器具の使い方をここで教わった。
そんなわけで私はまず材料に気を配るよりも調理を完遂することに意識を向けていた。食材の旬など知らなかった。新玉ねぎというのは玉ねぎの新種のことだと思っていた。だいたいスーパーに行けば季節によって値段の差はあれど物は手に入る。著しくまずい食材も今やほとんどない。食材の旬という存在に気づかないまま一生を終える可能性もあった。
2014年に吉祥寺に引っ越した。とはいえ西荻窪のほうが近かったので買い物などは混雑する吉祥寺より西荻窪に出ていた。
西荻窪は八百屋激戦区だ。いまパッと思いつく限り駅から歩いて5分の範囲に5軒はあるし、見落としてるだけでもっとある気がする。「餅は餅屋」とはよく言ったもので(ちなみに西荻には餅屋もある)、八百屋で買う野菜は本当に美味しい。目利きが良いのだろうか。西荻窪の八百屋で買ったお野菜を初めて食べたとき、野菜ってこんなに味があるんだなあと思った。舌がバカなだけかもしれないが、本当に、それまで野菜の味を気にしたことがなかった。ドレッシングをたくさんかけて、あるいは醤油やら味噌やらで煮込んだりして食べていたから、野菜の味って何なのかよく知らなかったんだと思う。
西荻窪の素晴らしいところは、専門のお店がたくさんあることだと思う。私は西荻窪がインドに似ているとよく言うのだけど、小売りの分業体制が根強く残っているところやお客さんに贔屓のお店があるところがそっくりだ。たぶん昔の日本はどこもそうだったんだろう。インドにいると血が落ち着くのだけど、西荻窪にいてもその感覚をおぼえる。
西荻窪には八百屋以外に魚屋や肉屋がある。パン屋も花屋もたくさんある。八百屋に行って「いま何が美味しいかな」とおじさんに聞けば旬のものをすぐ教えてくれる。肉屋に旬があるのかは知らないが、揚げたてのメンチカツや出来立てのお惣菜が並んでいると嬉しい。魚はオススメの食べ方を教えてくれて、食べやすいようにおろしてくれる。そういえば魚をよく食べるようになったのも西荻窪に住んでからだ。
2014年に八百屋の存在に気づいてから、野菜だけじゃなくパンでもお菓子でもなるべくコンビニやスーパーじゃなくて専門の小売店で買うことを心がけてきた(お肉は高いのでついスーパーで買ってしまうけど)。いま住んでいる家の近くにも八百屋さんがあって、買い物するのがとても楽しい。
私は本当にぼんやりしていて目の前の現象も物体もよくわからないものは認識すらできないのだけど(実家にもみりんはあったけど見えてなかったのだ)、一度その存在に気づき、それを良いと思ったなら、「いまさら」とか「遅い」とか「バカだ」と言われても良いと思うことをし続けたい。
八百屋さんの存在とその良さに気づいたのが25歳というのは一般的に言ったら遅いかもしれないけど、私は20代半ばになってまだ世界を学習し続けているのだと思う。今は30歳を超えて、それでもきっとまだ知らない世界の仕組みや面白いことや良いことがあるのだろうと思うと、それを知りたいと思うし、ワクワクする。
最近は畑づくりに興味があって、市民農園とかを見かけるとそこで作業している人をじっと観察してしまう。もしかしたらそのうち畑を始めるかもしれない。その前にベランダ菜園かな。まだやったことのない面白そうなものが存在することが嬉しい。どんどんこの世界の知識を蓄える。バカな私の頭がどんどん良くなっていく。そんな日々を過ごしてます。
(西荻窪の再開発計画についても触れたかったけどさらに長くなるからまた別のときにします)
◼️今日のメモ
・お昼からオンラインシンポジウムに参加。ナショナリズムについて考える。日本の状況を分極化と政治エリート主導の右傾化と表現した小熊さんの報告内容はとても興味深かった。心脳ナショナリズムについても興味深い。アパドゥライの捕食性アイデンティティの話とも関連する。あとでまとめよう。
・今日10万円の給付金申請書が届いた。もらったら西荻窪の個人経営のお店で使いたいなと考え、それで色々と思い出して↑のような長文になった。コロナ禍でも今のところありがたいことに生活に大きな支障は出ていないから、必要な人のところにお金が行くように使いたい。
・そんな流れで新にんにくのパスタを作った。せいろで蒸して、やわこくなったものをフォークの背で潰したり刻んだりして、パスタと和えるだけ。オリーブオイルの代わりにインドのギーを使った。味付けは塩のみ。美味しかった。
・ヒンディー語の教材作成は時間かかるけどとても楽しい。とある占いで「あなたは外国関係の教育の仕事が向いている」と宣言されたこともあり、もしかしたら本当に天職なのかもしれないと思っている。
◼️今日聴いた音楽(印象的なものだけ)
やさしいままで / never young beach
光の方へ / カネコアヤノ
◼️今日読んだもの
トーテミスムの説明がややこしいので先にリーチの書いたレヴィ=ストロース解説書を読む。かつて読んだことがあるのでさらっと。
◼️今日のアニメ・ゲーム他
かぐや様は安定で面白い。
くろさばはハクレン作成のためにルプスドミナの削除を待っている。時間が合わなくていつもコックス海賊団の討伐イベントができない。
ログをつける習慣が続いているのは良いことだ。あとは削れる時間を削って勉強時間を増やすのみ。