百年の一日

インドとお酒に溺れている岡本の日々

スラムのチキンカレー

私のつくるインドカレーは全てインド人に教えてもらったものだ。サンタナのスバーシュさんや歴代の借家の大家さんなど、色んな人に教わったけど、一番の基本を教えてくれたのはスラムのおばちゃんだった。

おばちゃんの家ではチキンカレーはご馳走なのだけど、私の誕生日など私に関するお祝いのときや帰国前日に作ってくれた。「だってチキン好きでしょ?」とおばちゃんは言うが、私はおばちゃんの作るカレーが何でも好きなのだ。たまたま最初に作ってくれたチキンカレーを絶賛しただけで。孫が大きくなっても子供の頃に好物だった赤ウィンナーを出し続ける祖父母のように、私の好物の情報はアップデートされない。嬉しくもあったけど心苦しくもあった。チキンカレーを出すというのは、かなり無理をしているように思うからだ。普通の日のご飯はたいてい豆カレーか季節の安い野菜のカレーだったから。

 

おばちゃんは他所の家のご飯を作る仕事をもう何十年としている。毎日朝昼晩と3食分のご飯を作りに出かけている。そんなおばちゃんの作る料理は何でも美味しかったけど、特にチキンカレーは究極に美味しかった。スパイスは抜群に効いていて、油に香りと旨みが溶け出していて、チキンの骨の髄まで味がしみ込んでいるような煮込み具合。

 

かつて昼市で私が作っていたチキンカレーは、おばちゃんが作るところを見て、聞いて、一緒に作って覚えたものの再現。でもまだまだおばちゃんの味には遠くて、いまも試行錯誤している。またおばちゃんのチキンカレーが食べたい。

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